私がこの仕事を始めて1年程過ぎた頃、バイオリンの先生を通じて売った場合、1割程のリベートを先生にお礼として支払うのがこの業界のしきたりであると知って、驚いた。
教師は生徒もしくは弟子を育てて、音楽を一生の宝として豊かな人生を過ごす。または場合によっては、プロの音楽家、演奏家を育て上げ、多くの人に夢や希望を与えるものだ、クラシック音楽とは、本質的にそういったものだという私自身の思いがあった。
もちろん多くの先生達はリベートは受け取れないので、その分生徒さんの楽器を値引きしてくださいと言われる事もありました。
教えるのが上手で、上達する生徒が多く、優秀な演奏者(プロもアマチュアも含め)を育て上げる方々は、レッスン代を高くする事は当然で、また多くの生徒さんが集まるでしょう。
何事でもより上達するためには、道具(バイオリンや弓)は良いものが必要です。しかしながら、バイオリンや弓は高価なもので、何を使うかは個々の自由で、人によって考え方は違います。
楽器の選択を強要したり、リベートを取って特定の楽器店と癒着すべきではない。自身の利益を優先し、生徒さんまたはその家族のお金をむしり取ることは許されません。そういったことがしたいのであれば、音楽教師、音楽家、演奏家とは名乗らず、○○楽器や○○バイオリンとなって、プロのディーラーになればよい。特に大学、高校の音楽科の先生でそういったことをしていれば、法律によって裁かれるし、学校の規則によって処分されるべきである。
今世の中が大きく変わろうとしている。人類が地球環境を破壊して、多くの生き物の存在を危うくいや我々の存続すらなくなろうとしている。今回のコロナ危機をきっかけとして、脱炭素へ大きく舵を切った。
クラシック音楽を愛する者にとっては、この様な音楽教育の在り方は、地球環境の破壊と同様に音楽そのものの破綻であり、バッハ、ベートーヴェン達が延々と築いてきた、人類の最も深く大切な芸術、文化、人間性そのものを破壊することである。音楽はリズム、メロディー、ハーモニーだけで成り立っているものではない。倫理性、宗教観、人類愛、哲学性、自然への愛、恋愛観、洞察力などを表現する大芸術である。音楽家、教育者がこれらを気にしないとしたら終わりである。人々がクラシック音楽を軽いものとみなし、個々の利益だけを追い求めるなら、まさに自分自身の首をしめ、殺すことになる。
今回のコロナ後を見据えて、新しい音楽界の在り方を考え、素晴らしい世の中をみんなで作っていきましょう。